プラスチック製品を作る金型の設計 ~色んなことを一つに考える~
プラスチック製品用金型
プラスチック製品を大量生産する際、その元として用いられる金型。この金型をはじめから作る場合、その設計段階からとても繊細な機能・条件が考慮されます。
金型の基本的な構造は、溶けたプラスチックを流し込んでくる射出装置との接合部から、プラスチックの通り道である「ランナ」、製品を成形する部屋「キャビティ」、プラスチックを冷やし固めるための熱交換媒体を通す通路などから出来ています。これら主要部分の設計に伴い考慮されることなどについて説明します。
金型の冷却
金型の冷却とは、金型に入ってくる溶融状態の「熱いプラスチック」の熱量と、金型から外すときの固体化した「冷めたプラスチック」の熱量の差分を取り去る(熱交換する)ことです。これには「コアブロック」という部分に通水することでの熱交換をコントロールすることが重要となります。金型の肉厚から冷却時間が考えられるため、その条件を果たし、かつ生産性も上がるように考慮して流路面積を設計します。
金型にかかる内圧
射出充填が行われているとき、キャビティに入った樹脂には150~200MPa(標準気圧のおよそ2000倍)の大きな圧力がかかっており、これは金型そのものが耐えられる限界に極めて近い値となっています。そのため金型の設計による強度の調整が必要なのですが、強度が十分でも大きなたわみが生じると求める製品成形が出来ないので、たわみ量がどの程度になるか、そのたわみが許容できるかを考慮する必要もあります。
ゲート、ガスベント
溶けたプラスチックが流れる「ランナ」と成形を行う「キャビティ」が繋がる部分を「ゲート」と呼びます。狭い流路から広い部屋へ入るときにはプラスチックにかかっている圧力の変化が起こるのですが、ゲートの設計が適切でないとこの圧力変化で流入のしかたが不良になり、成形に欠陥が出ます。そのため、キャビティの形などから適切なゲート設計を考える必要があります。
「ガスベント」はプラスチックが流れ込む前にキャビティ内に入っていた空気や、溶けたプラスチックが含んでいるガスを排出する通路です。この空気・ガス排出が不良だと、完成したものにガス焼けが生じるなどの不良がおこるので重要な部分となっています。
金型の設計を行う際は、これまで紹介した内容よりももっと専門的な数々の部品・構造について考えています。金型の構造は作成する製品の品質に直結するので、技術者の経験・知識や設計に掛ける時間がとても重要です。